「すべてのボルトに声を」──TOKBOのミッションが日本のインフラを変える
- Mugen Links
- 5月21日
- 読了時間: 6分
SusHi Tech Tokyo 2025が先日、盛況のうちに幕を閉じ、改めて世界のイノベーションの中心的舞台であることを証明しました。今年注目を集めた参加者のひとつが、インフラ監視のあり方を根本から変えようとしているイタリア発のディープテックスタートアップ、TOKBO(トクボ)です。
トクボのミッションは、エンジニアリングの中でも見落とされがちな存在である「ボルト」に焦点を当て、その可能性を最大限に引き出すこと。TOKBOは、ボルトをリアルタイムで構造の健全性を語る「スマートな番人」へと進化させる、最先端のIoTモニタリングソリューションを開発しています。
センサー技術とAIによる解析を組み合わせることで、インフラ管理者は重大な問題が発生する前に異常を察知し、構造物の寿命延長と安全性向上が可能になります。
今回は、TOKBOの創業からその進化の中核を担ってきたCEO(代表取締役)のイヴァン・モローニ氏とCTO(最高技術責任者)のマッテオ・ヴィッラ氏にお話を伺いました。SusHi Tech Tokyo 2025への出展は、Mugen Linksの支援のもと、日本市場での機会を探る第一歩でもありました。インタビューでは、彼らの技術、これまでの課題、そしてスマートで安全な未来へのビジョンについて語っていただきました。
ボルトという基本的な構造部品に着目した理由と、スマートデバイス化の仕組みについて教えてください。

マッテオ: TOKBOは、構造物の中でも最もシンプルで目立たない要素である「ボルト」に焦点を当てた、360度のモニタリングサービスを提供しています。
私たちのセンサーはさまざまな固定具に対応しており、構造物の重要ポイントに簡単に設置可能です。超音波技術と電子部品を用いて、締結力だけでなく、温度、傾き、加速度といった状態をリアルタイムで計測します。取得されたデータはTOKBOのクラウドプラットフォームに送信され、解析・可視化されます。
しきい値を超えた場合には、メールやSMSで自動的にアラートを送信し、点検・保守の必要性を知らせます。さらに、専門技術者チームがデータの解釈をサポート。構造物の検査からライフサイクル全体にわたってお客様と連携し、長寿命化と危険の未然防止を目指しています。
「会話するボルトネットワーク」が予知保全の分野にもたらす革新とは?
マッテオ: AIアルゴリズムに基づく独自技術によって、私たちは予知保全と安全基準への適合を大きく向上させることができます。 予測モデルを用いて損傷の兆候を事前に把握することで、タイミングの良い、的確な保守対応が可能となります。 これにより、効率性やコスト面の改善だけでなく、構造物利用者の安全性向上にもつながるのです。
ボルトのような機械部品にディープテックを組み込むのは難しかったのでは?

マッテオ: 自動車業界向けファスニングのリーディングカンパニー「アグラティグループ」での経験から、ボルトの導電性や弾性といった特性を利用し、単なる締結具以上の役割を持たせるというTOKBOのアイデアが生まれました。
とはいえ、それを「シンプルかつ信頼性のある」モニタリングデバイスとして実現するのは容易ではありませんでした。 マイクロ電子部品の開発、外部干渉を避けるためのCANバス通信、長期稼働のための電源選定(アクセス困難な場所ではワイヤレス方式)など、数々の課題に直面しましたが、綿密な設計と技術者の創造力で乗り越えてきました。
現在も新たなソリューションを検証中で、常に進化を続けています。
すでに成果を上げた実例はありますか?
イヴァン: 鉄道、地下鉄、ロープウェイ、橋梁、さらには石油・ガスバルブやクレーンに至るまで、50件以上の導入実績があります。予知保全における信頼できるパートナーとして、確かな経験を積んでいます。

特に印象的なのは、サレルノ大学との共同研究(FREEDAMおよびDREAMERSプロジェクト)です。地震の回転運動に耐えられる接続構造を開発し、後にFREEDAM耐震技術を採用した初の建築物に応用されました。研究段階では、機械学習を用いて実験データからボルトの異常を検出。本番フェーズでは締結管理と継続的なモニタリングにTOKBOが活躍しました。
また、運河に架かる鉄道橋での導入では、水位変化による緩み現象を検知し、迅速な保守対応につながりました。
そしてある地下鉄の分岐器においては、トラックの異常だけでなく、車両側の異常も検出したケースもあります。
SusHi Tech Tokyo 2025の印象や意義について教えてください。

イヴァン: まず、世界第4位の経済規模を持ち、研究・イノベーションに注力している日本の首都・東京で開催されるという地理的な強みが大きな魅力でした。
また、スタートアップ同士が革新性を競い合うだけでなく、協力的な雰囲気の中で都市のイノベーションやサステナビリティ向上を目指すイベントとしての価値も感じました。
弊社にとっては、日本市場における地震やインフラへの意識の高さと技術革新への関心を背景に、自社技術の紹介と現地パートナーとのつながりを築く大きなチャンスとなりました。
当日、どのような反応がありましたか?
イヴァン: 一つのボルトが「センサー化」されることで、構造物の健康状態を語る存在になるという点に、大きな関心が寄せられました。特に、鉄道や耐震分野における事例が注目され、日本での応用可能性について多くの議論が生まれました。
TOKBOの今後の展望を教えてください。
イヴァン:「IoTやAI、スマートモニタリングはすでに、未来のスマートシティにおける構造物監視の発展に欠かせない役割を果たしています。輸送ネットワークから建設現場、海から山まで幅広い分野で応用されており、TOKBOのモニタリングシステムは、技術者の専門知識と最先端の監視技術を組み合わせ、収集したデータを実際の運用価値に変える優れた例と言えます。これにより、持続可能性と革新を支える都市の発展に大きく貢献しています。」
マッテオ:「TOKBOは常に新しいソリューションや応用方法を追求し続けています。全てのボルト接合部がセンサー化でき、そこから得られるデータが私たちの周りの環境をより深く理解する手がかりになると示したいのです。その効果は多岐にわたり、安全性の向上、効率の最適化、資源の節約、そして構造物の寿命延長に繋がります。これらが経済的にも環境的にもより持続可能な社会を実現する鍵となっています。
ボルトから始まる未来へ —— TOKBOが描く次世代の構造監視
イヴァン氏とマッテオ氏の言葉からわかるように、TOKBOは単なる製品ではなく、「小さな部品にも、大きな可能性が宿る」という哲学に基づいた取り組みです。
締結具という枠を越え、知能化された監視システムへの進化は、私たちの社会を支える構造物の「設計・維持・保全」の未来を切り拓くものです。輸送・エネルギー・耐震といった分野で応用が広がる中、日本を含むグローバルなパートナーシップを背景に、TOKBOの挑戦はまだ始まったばかりです。
トクボは、これからも革新を止めることなく、より安全でスマートなインフラの未来を目指して進化を続けていきます。
TOKBOのスマートモニタリングソリューションにご関心をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
より安全で持続可能な社会の実現に向けて、
私たちとともに次の一歩を踏み出してみませんか。
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